「IT導入で若い病理医を育てる」

 続いて登壇した猪山氏は、熊本総合病院に着任後に開設した病理診断科へのIT機器の重点配置とバーチャルマイクロスコピー(WSIシステム)の導入、それを用いた病理不在の地域基幹総合病院の病理診断支援の取り組みについて発表した。

 かつて病理診断科はなかった同病院だが、猪山氏は大学病院の病理部と同程度の機能(システム環境)を再現しようと試行した。病理診断科と手術室間のライブ画像の双方向送信システムを導入、術中迅速診断が可能な環境を構築したのをはじめ、リンパ腫血液疾患の患者が多いことを考慮し、自動免疫染色装置を導入。さらに、ライブ画像対応のバーチャルマイクロスコピーを導入し、病理医が在籍しない支援病院(水俣総合医療センター)に対する遠隔診断を行っている。

 こうした病理診断部門の環境改善、進化の試行を通して猪山氏は、「働きやすい環境をつくらないと若い病理医は育たない。バーチャルマイクロスコピーの活用による地域医療の支援と遠隔病理診断の啓蒙活動も重要だ」とし、病理診断科のIT機器稼働の有用性を強調した。