「今後はアクティブシニアの誘致合戦が始まる。その場所が選ばれる理由が先鋭化していくだろう」――。三菱総合研究所 プラチナ社会研究センター 主席研究員の松田智生氏は「日本版CCRC推進会議 第4回」(2015年9月4日)の中でこのように語った。松田氏は、まち・しごと・創生本部が主催する「日本版CCRC構想有識者会議」のメンバーに名を連ねる、いわば日本版CCRCの中核を担う人物でもある。

三菱総研の松田氏
三菱総研の松田氏
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 まずCCRCには、“地方移住ありき”という誤解があるとする。「実は先日の中間報告だけでは明確でないが、近隣転居、郊外から中心市街地へのコンパクトシティ型、地方移住型、在宅のままの継続居住型とさまざまなケースがある」(松田氏)とした上で、実際の移住者インタビューを紹介した。

 最初に、東京の出版社に勤務していた60代の男性編集者が高知市に移住した事例を示した。県庁所在地の高知市に移り住むことで、都会並みの便利さと田舎暮らしの良さを両立できるとし、松田氏は本例を「ビッグシティからスモールシティへの中心市街地型CCRC」と呼んだ。ちなみにこの人物は、人気マンガ『釣りバカ日誌』の初代担当編集者で、主人公のハマちゃんのモデルにもなった方である。

 次に、東京生まれ東京育ちながら、飲料会社の支店長として長崎県に4年間赴任し、遂には早期退職をして長崎に移住した方の事例を取り上げた。「支社長や支店長経験者は、地元をよく知っている。そして地元へ恩返ししたいという思いがある。加えて比較的、経済的に余裕がある。これは転勤族の恩返し型CCRCと言える」(松田氏)。長崎では地元大学の地域連携室長として職を得て、同地でセカンドキャリアを歩んでいる。