課題は装着しやすさと上司の説得材料

 リハビリ担当の職員にパワーアシストハンドの導入を相談したところ、当初の反応は冷ややかだったという。「専門分野に立ち入ろうとすると強い拒絶に合うのは毎度のこと。『リハビリ器具として使おうとは言っていない。これはリハビリ“補助”器具なんだ』と説明すると、そういうことなら使ってみようという話になった」。

パワーアシストハンドのデモの様子。グローブに付いたジャバラを膨張・収縮させて、手指の曲げ伸ばしをサポートする
パワーアシストハンドのデモの様子。グローブに付いたジャバラを膨張・収縮させて、手指の曲げ伸ばしをサポートする
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 たかつでは、足首の屈伸運動をサポートする器具「イージ・ウォーク」も採用済み。こうした器具を好む人が一定数いて、今では各フロアに何台か置いているという。パワーアシストハンドも導入してみると「自宅用に買いたい」と言い出すほど気に入る人が出てきた。例えば、麻痺(拘縮)の緩和のため、手指の中にクッションを握り込んでいる人が「これを使うと調子が良くなる。(普段は人の手を借りるところで)クッションを自分ではめられたのがうれしい」と喜んだ。

 導入して良かったことは「何といっても、利用者に喜んでもらえたこと」。一方で、改善点も見つかった。一つは使い勝手だ。「グローブ部分が、ウェットスーツと同じ素材でてきていて、装着にコツがいる」。使用中にフィッティングがズレて職員が呼ばれるケースも多く、イージ・ウォークのように、ひとたびスイッチを入れれば職員がそばを離れられるわけではない。「定期的に製品への理解を深める講習などが必要と感じる」。

 また、メーカー側に希望することとして「導入にはそれなりの予算が必要になるので、決裁者を説得しやすい材料があるとありがたい。当施設では1カ月間の試用を経て導入に至ったが、ほかに、利用現場を訪れての使い方の提案やアドバイスなどがあれば助かる」とした。