2015年9月15日に開催された「介護ロボットフォーラム2015 in 新横浜」(主催:かながわ福祉サービス振興会)では、七沢リハビリテーション病院脳血管センター病院長の山下俊紀氏による講演に続き、特別養護老人ホーム新鶴見ホームの事務長である伊藤尚子氏が、小型のセラピーロボット「PALRO(パルロ)」を導入した効果について講演した。

 富士ソフトが販売するパルロは、会話やゲーム、クイズ、ダンスなどの機能を持つ全高約40cmのロボットだ。展示会でパルロに出会った前所長の意向で、2013年10月に鶴見ホームに導入されたという。新鶴見ホームは定員が333人(うち特養217人)、デイサービスセンター(定員は一般45人、認知症患者12人)も併設しており、県内最大の介護施設だ。導入当時は「アクティビティー全般をパルロに任せ、人手不足を補ってもらうつもりだった」という。

当初はパルロ導入に反対だったが、今は効果を認めているという新鶴見ホーム事務長の伊藤尚子氏
当初はパルロ導入に反対だったが、今は効果を認めているという新鶴見ホーム事務長の伊藤尚子氏
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 ところが、パルロの仕事ぶりは、周囲の期待通りにはいかなかった。「パルロの出すクイズはマニアック。難しくて答えられない。ダンスは導入当時、童謡をBGMにした幼稚園のお遊戯レベルのものだけだった。動きが小さく、お年寄りの反応もにぶい。会話機能にはかなり期待していたが、早口で聞き取れず、みんながポカン。私たちが忙しくしているところへ『何かやってって言って』と話しかけてくるし、施設を出る人に『コンニチハ』と声をかける」と、会場から笑いがもれるほどの酷評を披露した。

 しかし、バージョンアップを繰り返したことで、会話の内容も豊富になり、ダンスのレパートリーも増え、歌の機能も加わった。重度の障害を持ち、会話ができない利用者であっても、パルロが歌えば、一緒に口ずさむシーンが見られるという。