「一定の精度で予測可能になりつつある」

 原氏らの取り組みは、健康経営を指向する企業と協力したもの。数年間分の健診データやレセプトデータなどのデータセットを基に過去の健康状況や既往・処方歴を分析・学習し、数年後の状態を予測するものだという。「疾患の発症や検査値の推移、治療継続がどの程度進むのかなどを予測する。検証半ばだが、かなりパターンがあることがみえており、一定の精度で予測可能になりつつある」(原氏)。

 こうした「予測」「実行」フェーズにAIを活用する上で、原氏らは機械学習・深層学習の中でも、特に時系列データ処理に注力しているとする。「画像の識別処理などでは基本的に大量のデータのスナップショット、つまり瞬間のデータセットを基に学習させ、人間より高い精度で識別できることを実証している。一方で時系列データ処理は、時間軸ごとのタイミングで、その状態を踏まえて学習すると次の状態がどうなるか予測すること。技術的にも難しく、新しい領域だ」(同氏)。

 糖尿病の診療では、療養指導士によって療養に費やす時間やスキルのばらつきがある中で、治療継続に資するコミュニケーションやインタラクションが行われているかどうかの差が生じるとされる。「療養指導士と患者のやり取りを学習させていくことで、治療継続がより進むのではないか」と原氏は見る。