二地域居住も取り込む

 移住者のターゲットはUターン、Iターンを見込む。既に展開済みのケアハウスの実績では、県外からの移住者が40%を占める。また、二地域居住も取り込みたいとする。これは過ごしやすい春夏に都会からの移住者が利用し、雪の降る冬には除雪の苦労から解放されるために地域内からの移住者を迎え入れる、いわゆるシーズン移住の考え方である。

 建物の外観についても工夫を凝らす。「高齢者の生活のしやすさはもちろんだが、住環境はデザイン性の高さにこだわった。オークフィールド八幡平は『施設』ではない。入居者は『施設』という言葉に非常に敏感。ネガティブなイメージを払拭するような建物にしている」(山下氏)。リゾートハウスのような外観デザインや、開放的な共用スペースを備えたレストランには、そうしたこだわりが見て取れる。

 同社では地域を巻き込んで、CCRCの勉強会・ワークショップを積極的に開催している。そこから具体的なアイデアが生まれ、入居者同士がお互いにできることを助け合うワークシェアリングシステムを地元の若手ベンチャー企業が開発した例も生まれた。その活動は順調に思えるが、ここに至るまでは挫折の繰り返しだったと語る。

 「ここまでたどり着くのには4年かかった。プロジェクトのスタートは東日本大震災の直前だったが、震災で建設費が高騰する中で、何度もやり直した。コストが見合わずに何度も事業が座礁する経験の連続だった」(山下氏)。

 山下氏によれば、キーパーソンの育成、空き家ストックの活用、介護が介在しない新しい形の高齢者施設への融資理解、田舎暮らし=何もないといったイメージギャップの打破など、ヒト・モノ・カネといった部分での課題はまだまだあるという。例えば安比高原にはバブル時代にできた立派なペンションが50棟ほどあり、そのうち、約半数が使われなくなっている。今後は、こうした資源の活用なども視野に入れていきたいとした。