講演する馬場氏
講演する馬場氏
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 1滴の血液から13種類のがんを超早期に発見する――。そんな目標を掲げ、国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野 主任分野長の落谷孝広氏が主導する「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」(関連記事)。高い注目を集めるこのプロジェクトに参加している研究者の1人が、名古屋大学教授 先端ナノバイオデバイス研究センターセンター長の馬場嘉信氏である。

 分析機器・科学機器に関する総合展示会「JASIS 2017」(2017年9月6~8日、幕張メッセ)のライフサイエンスイノベーションゾーンの基調講演に登壇した馬場氏は「ナノバイオデバイスが拓く未来医療・創薬」と題して講演。血液によるがん発見に向けたデバイス技術などについて話した。

 馬場氏が参加している体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクトでは、細胞間の情報伝達などに関わるエクソソーム、およびエクソソームが内包するマイクロRNAに着目したがん検出技術の開発を進めている。ここに貢献する技術の一つが、太陽電池などに使われている“ナノワイヤー”だという。

 ナノワイヤーはナノメートル(nm=10-9m)サイズの直径を持つ細線構造を指し、デバイス表面の特性の精密な制御に利用できるという特徴がある。プロジェクトでの研究ではこのナノワイヤーを、がん細胞由来のエクソソームを体液から取り出すために使うチップの底面に敷き詰めておく。この構造により、体液からエクソソームだけを捕捉し、表面の膜を壊して内部のマイクロRNAを効率よく取り出せるという。

 例えば、尿検体をこのチップに1回流すだけで、含有するエクソソームの約95%を取り出せた。既に、体液から1000種類以上のマイクロRNAを同定することに成功している。