ヒトや疾患への深い理解もたらす

 このように、エクソソームやマイクロRNAに着目した落谷氏らの研究ではがん早期発見への応用に注目が集まっているが、ポテンシャルはこれにとどまらないと同氏は話す。エクソソームやマイクロRNAは「人間存在そのものや(さまざまな)疾患に関する理解を高めてくれる」(落谷氏)。

 例えば人間はその進化の過程で、ゲノムの多様性を広げる手段としてエクソソームを活用した可能性があるという。また、細胞間のコミュニケーション、さらには臓器間のコミュニケーションによって実現される生体機能の理解にも、エクソソームが重要な役割を果たすことが分かってきた。

 疾患の理解に関して言及したのが、循環器疾患や脳血管疾患とエクソソームの関係である。エクソソームは動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などにもかかわる可能性があるという。がんだけでなくさまざまな疾患の病態を示すマーカーとなる可能性を秘めているわけだ。

 落谷氏がこだわるのは、こうした基礎研究の成果をいち早く臨床応用へつなげること。がん早期発見に向けたプロジェクトなどの成果を「人間ドックの専門家に見てもらい、正しい活用につながるよう望んでいる」と学会関係者に呼びかけた。