粒子線治療は“量子線治療”へ

 中核となる組織、放医研においても“量子”というキーワードに着目した研究開発に力を入れるという。例えば放医研が長年、力を入れてきたがんの重粒子線治療は「次世代へ向かう。炭素線を当てる方式から、マルチイオン方式などのベストミックスへと移行していく」。すなわち、重粒子線治療や陽子線治療といった従来の枠組みを脱し「“量子線治療”へと進化させる」(平野氏)。レーザー加速技術など、日本原子力研究開発機構から加わったメンバーが深い知見を持つような技術も活用して治療装置を小型化し、「“量子メス”と呼べるような治療を確立したい」と平野氏は話す。

 がんや認知症の次世代診断技術の開発も、中心テーマの1つ。ここでも、従来の分子イメージング技術を進化させた「量子イメージングという観点から研究を進めたい」(平野氏)。

 こうした技術を生かした量子医学・量子医療を日本から立ち上げることが、平野氏が掲げる目標。「物質・材料分野は既に量子の世界へと進んでいるが、生体となると景色が変わる」(同氏)とし、生物学・医学分野に“量子”の知見を取り込んでいくことの重要性を強調した。