企業による社員の健康管理が重要視されるなか、日本航空(JAL)のような大企業のトップは、どんな意識でどのような取り組みを実践しているのか――。

 「第3回 健康と経営を考える会 シンポジウム」(2016年5月26日、主催:健康と経営を考える会)に登壇した日本航空 取締役会長の大西賢氏は、「経営者のリーダーシップによる健康経営の実践」と題した基調講演に登壇。JALグループの健康経営に関する考え方や施策などを紹介した。

日本航空 取締役会長の大西賢氏
日本航空 取締役会長の大西賢氏
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 2010年1月19日にJALが経営破綻した際、大西氏は社長としてその再建を担った。JALが再生するためにはどのような変革が必要なのか。大西氏は「事業構造の改革以上に、内面的な構造改革が不可欠だ」と考えた。そして、その内なる構造改革の第一歩として、誰もが毎日思い浮かべることができる企業理念を新た作成。この企業理念を達成するための施策が「JALフィロソフィ(哲学)+部門別採算制度の導入」だった。そして、この発想を健康経営に置き換えると「意識改革(マインド・セット)+実践・実感」となる。

 健康経営の目的には、「リスクの低減」「顧客サービスの向上」「生産性の向上」「ブランド価値の向上」などが挙げられる。JALではこれを「安全運航」「最高のサービス提供」「豊かな人生」「働きがい」という表現に置き換え、健康経営においては「この4つを成し遂げるためには何をすればよいか。その考え方が大切だ」と大西氏は強調する。そして、その中心となるのが「人材」だ。

 会社経営でも健康経営でも、物事を変えていくためには意識改革が非常に重要となる。しかし、健康経営で難しいのは「多くの人は病気が重症化しないと、健康意識が高くならない」ということ。この健康意識を「未病、あるいはその前の段階で持ってもらうことが極めて重要になる」(大西氏)。