大分県大分市にある224床の急性期病院、大分岡病院でクラウドを活用した電子カルテのバックアップシステムが稼働したのは、2015年12月。隣接する熊本県が大地震に襲われ、大分県でも大きな揺れを経験したのはそれからわずか4カ月後だった――。

 日本マイクロソフトが2016年5月26日に東京都内で開催したイベント「Microsoft CityNext ソリューションフォーラム 2016」では、大分岡病院 医療情報課 次長の村田顕至氏が登壇。「電子カルテデータのクラウド保存による災害時診療継続計画の実現」をテーマに講演した。同氏は、米Microsoft社のクラウドサービス「Microsoft Azure」を用いた電子カルテデータのリアルタイムバックアップシステムの導入を担当した。

講演する村田氏
講演する村田氏
[画像のクリックで拡大表示]

 大分岡病院は川の堤防沿いにあり、南海トラフ級の大地震が起きた場合には最大4mの浸水が想定される。電子カルテなどのデータを保管しているサーバー室は3階にあり、浸水の被害は避けられる高さにある。だが、もともと病室だった部屋を使っているため、免震構造ではなく、水の配管が通っているなど、災害時には大きな被害を受ける懸念がある。

 全避難命令が出たような場合には、誰がどのように電子カルテなどのデータのバックアップを持って逃げるのか。バックアップをテープなどの媒体で持って逃げても「後から中のデータを取り出せず、活用できない可能性もある。そんなことを考えるうち、災害時にデータをどう守るかの問題を解決できない状態が2年ほど続いた」(村田氏)。