日本でなかなかできない仕組みは海外から

 武藤氏が2010年に自ら開設した「祐ホームクリニック」では、当初からICTと在宅医療をどのように組み合わせるかを考えてきたという。在宅医療は自らのクリニックだけでは完結せず、他の職種との連携が必須となることから、「ITやクラウドとの馴染みが良い」(同氏)と話す。

 現在、約50人の医師を抱え、1日に130件以上の訪問を重ねている。業務を効率的に進めるため、位置情報の一元管理を利用した緊急往診や、移動中にカルテを口述入力するシステムといったICTの仕組みを整備してきた。

 2015年にはシンガポールでも同様の在宅医療サービスをスタート。シンガポールではITシステムの開発にも取り組んでいる。電子カルテやレセコン、患者情報を共有できるSNSなどを含んだプラットフォームを構築し、付随してIoTやロボットの利用を進めている。

シンガポールでは最先端技術を導入。右下がiPadを装着した移動型ロボット
シンガポールでは最先端技術を導入。右下がiPadを装着した移動型ロボット
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 「セグウェイのような移動型ロボットにiPadを装着し、日本から遠隔操作ができるようにしている。必要ならばロボットを使ってシンガポールの患者と会話することができる。日本ではなかなかできないことをシンガポールで試して、結果的にその仕組みを逆輸入することを考えている」(武藤氏)。