生涯活躍のまち(日本版CCRC)の現在地点を報告した「日本版CCRC推進会議 第7回」(2016年3月11日)。内閣官房、地方自治体、CCRCの運営事業者に続き、ヘルスケアリート運用を手がけるジャパン・シニア・リビング・パートナーズ 代表取締役社長の藤村隆氏と、初期段階から日本版CCRCの研究会に参画し“健康”の視点からまちづくりを考えているルネサンス アクティブエイジング部 コミュニティ開発担当 近藤大祐氏がそれぞれ講演した。

「移住してきてお金を使ってくれる層がありがたい」

 ヘルスケアリートとは不動産投資信託の一種で、おもに老人ホーム、サ高住、病院などのヘルスケア関連施設を対象とする。同社はそれら施設を保有し、運用業者から家賃収入を得る。2015年7月に東京証券取引所に上場し、約300億円の資金を調達。現在、5000人強の株主がいる。「95%が個人投資家で、その半分以上が65歳以上の高齢者。我々が調達した資金が、高齢者を中心とした方々が利用する介護施設や高齢者住宅に投じられ、資金が循環していることになる」(藤村氏)。

ジャパン・シニア・リビング・パートナーズ 代表取締役社長の藤村隆氏
ジャパン・シニア・リビング・パートナーズ 代表取締役社長の藤村隆氏
[画像のクリックで拡大表示]

 その特性上、同社が投資する物件は施設型CCRCと呼ばれるものだ。さらに富裕層からアッパーミドルをターゲットとするため、まち全体を包括する自治体版CCRCとは性格が異なる。そうした中でも、比較的イメージが近いのが東京・多摩ニュータウンで運営する「ゆいま~る聖ヶ丘」である。いわゆる団地再生型のプロジェクトであり、1階に小規模・多機能のデイサービス、2~4階までが自立高齢者のための居室となる。

 さらに1階には、地域に開かれた「ゆいま~る食堂」を有する。「安くておいしい食事を近所の人たちも体験することができる。そこで地域住民と入居者が地域交流を図っている。地域のNPO法人が栽培した野菜を食材として使うなど、地域交流を意識した作りだ」(藤村氏)。

 同社ではこれらの知見を生かし、全国のCCRCのプロジェクトにも参画している。藤村氏は「あくまで施設型CCRCを成功させるための条件」とした上で、移住したくなる魅力があること、自立者を中心とした終の棲家であること、スケールメリットがあること、アッパーミドル層を対象とすること、事業継続性のある事業者が運営することの5項目を挙げた。

 「リートの場合、まちそのものを購入するわけにはいかないので、あくまで施設型に限定される。(日本版CCRCは)人口減少対策、移住促進対策と言われるが、20~30の居室では貢献できない。数百人の規模で外部から人を移住させて初めて成功と言える。そうした意味でも一定規模は必要になってくる。ハード面でも一定規模がないとパブリックスペースが確保できず、コミュニティー面でもあまりに少人数だと煮詰まってしまう」(藤村氏)。

 また、アッパーミドル層を対象とすることに関して、藤村氏は「やや誤解を招くかもしれない」としながらも、「自治体から見ても、むしろ、移住してきてお金を使ってくれる層がありがたい。コミュニティーの多様性と同質性を共存させることも重要だ」と語り、自治体版CCRCとは異なる側面からの地域貢献について触れた。