「情報幾何学」を活用

 ソニーCSLからは、製薬企業で長く創薬や再生医療の研究に携わった経験を持つ桜田一洋氏(同社 シニアリサーチャー)が登壇。目の前の患者だけでなく「未来の社会を健康にできないか」(桜田氏)との視点で進めている、予測・予防医療に向けた研究を紹介した。

 予測・予防医療への道のりを、同社は3つのステップで捉える。生体にかかわるさまざまな情報を計測する「センサー」、その情報を解析し評価する「人工知能」、その結果をサービスなどに反映する「ソリューション」だ。

 センサーにかかわる要素技術として挙げたのが、ゲノム解析やバイオマーカー、細胞分析、ウエアラブルセンサーなど。「症状が出てからのデータは病院にあるが、その前の(健康なときの)データがない」(桜田氏)と、日常生活での情報収集の重要性を指摘した。

 人工知能については、環境情報やバイオマーカー、遺伝子情報などを統合的に解析する「新しいデータ推論の枠組み」が研究テーマの1つ。情報幾何学のノウハウを取り入れた解析手法の開発などに取り組んでいるという。

 ソリューションについては、「人生最初の1000日」「現役世代」「高齢期」のすべてにわたる「ライフコース・ソリューション」を構想する。バイオマーカーや環境要因、生活習慣などを生涯にわたって計測。その結果を反映したヘルスケアサービスを提供していくというものだ。

 こうしたソリューションは単独の「企業からは生まれない」と桜田氏は話す。そこでは、さまざまなプレーヤーを巻き込んだ「オープンイノベーションが鍵を握る」(同氏)。