ブタからの移植治療を確立へ

 1型糖尿病の根治を目指した治療法としては現在、人間のドナー(提供者)の体から膵島を取り出し、これを患者の門脈内に注入する細胞移植治療が行われている。ところがこの治療法は「ドナーが不足していることに加え、免疫抑制剤を飲み続ける必要が生じることから、その副作用や費用が問題になる」と、国立国際医療研究センター研究所 膵島移植プロジェクト プロジェクト長の霜田雅之氏は話す。

国立国際医療研究センター研究所 膵島移植プロジェクト プロジェクト長の霜田雅之氏
国立国際医療研究センター研究所 膵島移植プロジェクト プロジェクト長の霜田雅之氏
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 これに対し、ブタの膵島を用いたバイオ人工膵島は、ヒトの膵島に近い機能を持つうえに、大量生産しやすい。特殊なカプセル(アルギニンカプセル)に封入して移植することで、免疫抑制剤の服用も不要にできる可能性があるという。遺伝子改変により、より効果が高く安全な細胞を作れるメリットもある。1型糖尿病患者に対するブタからヒトへの異種移植は、日本では2016年5月に解禁の方針が示された。

 この治療法の臨床応用に向けては、ウイルスなどに感染していない医療グレードのブタの飼育施設や、ブタからの膵島分離・カプセル化などを担う細胞加工施設(CPC)などのインフラ整備が欠かせないという。ブタからヒトへという「異種移植のための細胞加工施設は日本には存在しない」(霜田氏)ことから、今回のプロジェクトで集めた寄付金をその整備に活用する。CPCなどのインフラが整うことで、研究を「非臨床試験など次のステップへ進めることができる」と霜田氏は話している。

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記事初出時、2ページ目と3ページ目で「バイオ人工膵島」の表記が誤っていました。お詫びして訂正します。