年間発症率は10万人に1~2人、原因は不明。子供のうちに発症することが多く、いったん発症すると毎日のインスリン注射が生涯にわたり欠かせなくなる――。

 現代の不治の病の1つ、それが1型糖尿病だ。2型糖尿病が生活習慣病であるのに対し、1型糖尿病は生活習慣とは関係なく発症する。膵臓中のインスリンを分泌する細胞(膵島)がほとんどなくなる疾患で、遺伝性や感染性はなく、多くは自己免疫疾患によると考えられている。血糖値を下げるインスリンが分泌されなくなるため、患者は血糖をコントロールするために、注射やポンプで日々インスリンを補充することが欠かせない。

日本IDDMネットワーク 副理事長兼事務局長の岩永幸三氏
日本IDDMネットワーク 副理事長兼事務局長の岩永幸三氏
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 国内の年間新規患者数は1000人ほどで、多くが子供だ。2型糖尿病に比べて患者数が圧倒的に少なく、目を向けられる機会が少ないことに加え、根本的な治療法は確立されていない。患者とその家族の支援団体であるNPO法人日本IDDMネットワーク 副理事長兼事務局長の岩永幸三氏は、1型糖尿病を「絶望から始まる病気」と表現する。同氏自身も24年前、当時3歳の娘が1型糖尿病を発症した経験を持つ。子供が発症すると、その親は自らに責任はないにもかかわらず「自分を強く責める」(岩永氏)。患者本人にとってもその家族にとっても、苦しみの多い病気だ。

 そんな1型糖尿病を「治る病気」にすることを目指したプロジェクトを、佐賀県と日本IDDMネットワーク、トラストバンクの3者が共同で進めている。「佐賀県庁×日本IDDMネットワーク×ふるさとチョイス 協働プロジェクト」がそれだ。ふるさと納税の寄付金を、NPO法人を通じ、1型糖尿病の治療法確立に向けた研究などの支援に充てる取り組みである。2017年3月13日、プロジェクトの報告会が東京都内で開催された。