大規模なコホート研究などに取り組んでいる弘前大学COI研究推進機構。同機構が2016年1月29日に開催した「弘前大学COI ヘルシーエイジング イノベーションサミット2016」のパネル討論では、今後の課題などについて議論が進められた。討論で浮かび上がったキーワードは、いわゆる“社会実装”だ。

パネル討論の様子
パネル討論の様子
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 パネル討論には、社会実装の一翼を担うCOI参加企業が登壇、それぞれの取り組みを紹介した。例えば、カゴメは「(弘前COIの大規模な健康調査事業である)岩木健康増進プロジェクトのビッグデータを活用して、野菜がどう健康に良いのか、エビデンスを集めるとともに、どんな人が野菜を摂取できていないのかを明らかにし、いわゆる野菜不足の人が“なにげなく”野菜や果物を摂取できるソリューションを作り、提供したい」(カゴメ イノベーション本部 自然健康研究部長の菅沼大行氏)と語った。

 自社で病院を複数経営しているNTT東日本は、まだ構想段階と前置きした上で以下のように話した。「個人の一生涯の健康情報を、直感的に理解しやすい形で時間軸上に表示するツールなどを構想している。既に販売中の診療情報連携システム『光タイムライン』を、健診結果を伝える時などに応用できないか検討したい。例えば、岩木健康増進プロジェクトの600もの検査・調査項目のうち、認知症に関連があるらしいと分かってきた項目だけを、まとめて時系列で表示するなど、健診結果を分かりやすい形で表示し、現場の健康指導で役立ててもらえたら」(ビジネス&オフィス事業推進本部 医療ヘルスケア事業推進室 部長の原田泰子氏)。

 全国に130カ所のスポーツクラブやリハビリ施設を持つルネサンスの取締役常務執行役員である高﨑尚樹氏は、厚生労働省や経済産業省の健康関連政策づくりに参画する立場から「健康に関するさまざまな研究や施策を見てきたが、弘前COIは自然科学の観点からは質も量もナンバーワン。ただ、今後は社会科学からの応援が必要であろう。市民や地元企業が健康づくりを“自分ごと化”していけば、健康診断の受診率や企業健保の健康づくり参加率は飛躍的に上がるはずだ」と期待を述べた。

 この他、イオンはモールウォーキング(関連記事1)、花王は内臓脂肪測定サービス(同2)、GEヘルスケア・ジャパンはビッグデータ解析(同3)で健康増進に寄与していることを紹介した。