ロボットを使う内視鏡手術、いわゆるda Vinci(ダヴィンチ)手術の保険適用対象が、2018年度診療報酬改定で大幅に拡大される。既に保険適用済みの前立腺がんと腎臓がんに加え、新たに肺がんや食道がん、胃がんなど12件に対するda Vinci手術が対象になった(関連記事)。

da Vinci手術の保険適用拡大が決まった直後のタイムリーな開催となった
da Vinci手術の保険適用拡大が決まった直後のタイムリーな開催となった
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 ただし保険点数は従来技術、すなわち現行の内視鏡手術と同じ。ロボットを使うことによる加算は付かなかった。da Vinci手術の既存技術に対する優位性が、十分には示されていないことを反映した形だ。

 da Vinci手術を主導してきた臨床医らは、今回の保険適用拡大をどう受け止めたのか。改定の詳細に関して、中央社会保険医療協議会(中医協)の答申があった直後の2018年2月10日、「第10回 日本ロボット外科学会学術集会」が東京都内で開催された。泌尿器や消化器、婦人科などのda Vinci手術の第一人者が「これから10年 ロボット手術の将来と保険収載の現状」と題するシンポジウムに登壇し、それぞれ2018年改定に触れた。

「国産ロボットの実用化を急ぐ」

 最初に、神戸大学大学院医学研究科 腎泌尿器科学分野 教授の藤澤正人氏が、前立腺がんや腎臓がんに対するda Vinci手術の現状を説明した。前立腺がんでは2012年に前立腺全摘除術に対して、腎臓がんでは2016年に腎部分切除術に対してそれぞれda Vinci手術に保険が適用された(関連記事2)。いずれの疾患でも開腹手術に代えてda Vinci手術が行われるケースが増えており、例えば腎部分切除術は保険適用からまだ2年弱だが、国内手術件数の約半数をda Vinci手術が占めるに至った。

 課題はコストだ。手術単体の純利益で見ると、da Vinci手術と従来の腹腔鏡下手術はほぼ同等という。ただしメンテナンス費や減価償却を含めると、da Vinci手術は採算面では厳しいと藤澤氏は指摘する。今後の診療報酬改定での加算を要望していく考えだ。

 ロボット支援手術のコスト低減などを狙って、藤澤氏はメディカロイド(神戸市)と共同でポストda Vinci世代に向けた手術支援ロボットを開発している(関連記事3)。2019年度に市場投入する計画である。国産ロボットの早期臨床応用を目指し、薬事承認取得に向けた取り組みを加速させるとした。