医療保険者に蓄積されている特定健診やレセプトのデータを使って効果的に医療事業を進める「データヘルス」。弘前大学COI研究推進機構が2016年1月29日に開催した「弘前大学COI ヘルシーエイジング イノベーションサミット2016」の基調講演では、厚生労働省 保険局 医療介護連携政策課 医療費適正化対策推進室の安藤公一氏が、データヘルスについて講演した。

講演する厚生労働省の安藤公一氏
講演する厚生労働省の安藤公一氏
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 厚労省はデータヘルスによって実現を目指すのは、次の3つだ。第1は、保険者が自らの立ち位置を知り、対策すべき加入者を知り、戦略的に事業を企画立案、実施、評価すること。いわゆるPDCAサイクルを適用して保健事業を進めることである。

 第2は、企業、自治体、医療関係者、学識経験者、事業者などが協働する体制の構築。第3はヘルスケア産業の量的・質的な拡大である。

 そこで、各保険者のデータベースに、各健康保険組合(健保)が「身の丈を知る」ための機能を整備した。健康保険組合連合会(健保連)のシステムでは、他の健保との比較が可能。同等規模・業態の組合と健康状態や医療費を比べることで、自らの特徴を把握できるようになっている。また、加入者の健康状況を把握でき、例えば「検査結果によれば受診すべきなのに、まだ病院に行っていない人」など、対策を打つべきターゲットを確認できる。

 中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)では、個々の加入者に直接働きかけをするのは難しいため、企業(事業主)に働きかける仕組みを採る。企業別に健康状況を把握でき、業種業態別や都道府県別などで各支部の位置づけを簡便に確認できるようにしている。

「目を引く健診結果」を意識

 加入者に健康情報を分かりやすく伝えることにも注力する。ターゲットは、医療費の1/3を占める生活習慣病だ。「健康なうちから生活習慣を改善することが発症・重症化予防のカギだが、健康でいる間は誰しも健康への関心が薄い」(安藤氏)という課題がある。そこで、健康情報を目を引く形に加工して表す手法を取り入れた。例えば、得点化して大きく表示したり、血糖やBMIなどを軸に取ったレーダーチャートにしたりして、視覚にうったえている。

 また、健康診断の結果は数値だけを伝えるのではなく、結果が意味するものを明らかにするよう、勧めている。「HbA1cの数値がいくつと言われても、多くの人には意味が分からない。個人の健康にとってその数値が持つ意味を明らかにすることが大切。その上で、受診や行動変容を促す」(安藤氏)。