経済産業省 商務・サービスグループ 政策統括調整官(兼 内閣官房 健康・医療戦略室 次長)の江崎禎英氏は、2018年1月19日に京都市で開催された「第3回 デジタルヘルスシンポジウム」(主催:京都大学、ミクシィ)に登壇。「健康・医療情報を活用した予防政策の実現 ―医療分野における人工知能の役割―」と題し、健康・医療分野におけるデータ活用やAI(人工知能)活用の可能性と課題について話した(関連記事1同2)。

登壇した江崎氏
登壇した江崎氏
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 江崎氏は冒頭、2018年1月に開催された世界経済フォーラムのダボス会議で、健康・医療政策に関して「世界が日本を見ている」(同氏)ことを実感したと話した。各国が健康・医療分野の進むべき道に迷いを抱えていることが背景にあるという。一方、日本では医療費の高騰が続いており、健康・医療を支えるシステムの抜本的な見直しが欠かせない。そこでは「どこにデジタルをきっちり使うか」(同氏)が大きなポイントになるとした。

 その一つとして昨今、ビッグデータ活用に期待が集まっている。だが医療分野で本質的に重要なのはクオリティデータ、つまり品質が担保されたデータだと江崎氏は指摘する。「海外ではビッグデータの活用が叫ばれているが、データの質が悪いからこそビッグなデータが必要だとも言える。ディープラーニング(深層学習)も、最初に誤ったデータを学習させたのではディープに間違い、後戻りできなくなる」(江崎氏)。クオリティデータをもとにAIのアルゴリズムを構築し、医療分野での使用に耐えられる水準を実現する取り組みが重要になるとした。

 日本は1億人強という小さくない人口を抱えながら、質の高い健康・医療データを収集するための土壌はあると江崎氏は見る。一方で、そうしたデータを活用しさまざまなサービスを生み出せるとの期待は以前からあるものの、「そのプラットフォームに電車が走ったことはない」(同氏)。