京都大学とミクシィは2018年1月19日、「第3回 デジタルヘルスシンポジウム」を京都市で開催した。テーマは「PHRと情報銀行の今後の展望」。医療機関や日常生活で収集する医療・健康情報とその活用をめぐり、行政や大学、企業から6人の講演者を招いた。

 冒頭では京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 教授の黒田知宏氏が、開催趣旨を説明。「情報銀行がやってくる、PHRはどう繋がるのだろう?」と題し、医療・健康情報活用の現状と課題をまとめた。

開催趣旨を説明する京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 教授の黒田知宏氏
開催趣旨を説明する京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 教授の黒田知宏氏
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開会の挨拶をする京都大学大学院医学研究科長 教授の上本伸二氏
開会の挨拶をする京都大学大学院医学研究科長 教授の上本伸二氏
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 黒田氏はまず、ヘルスケアデータや行動履歴など、個人情報を含むデータに関して、本人の意向を踏まえた流通・活用を促すことで、そのメリットを個人や社会に還元することを目指す「情報銀行」のコンセプトを説明した。2017年5月12日にはいわゆる「次世代医療基盤法」が公布され、1年後、すなわち2018年春の施行が予定されている。同法では医療情報を匿名加工し、管理・提供する責務を負う事業者を「認定匿名加工医療情報作成事業者」として認定(関連記事)。医療情報を要配慮個人情報とし、いわゆるオプトアウトによる第三者提供を禁じる改正個人情報保護法が、医療情報活用の妨げとなることを回避する。こうした環境整備によって「情報銀行がやってくる、ところまでは来た」(黒田氏)。

 ただし、それだけでは不十分だという。AI(人工知能)も活用しながら“守護霊”のように個人の健康を見守る仕組みを実現するためには、情報銀行で活用が想定される医療機関のデータ集積基盤(EHR:Electronic Health Record)に加えて、日常生活のデータ集積基盤(PHR:Personal Health Record)が必要になる。黒田氏は、ある周期を持つ事象を正しく捉えるには、その周期の2倍以上の周波数で測る必要があるという標本化定理に触れながら、生体情報に関してこの条件を満たすには「月1回といった頻度の診察だけでは、疾患によっては不十分。日常生活空間からデータを取るしかない」と指摘した。