20年ほど前に日立製作所が実用開発した光トポグラフィー。医療現場では現在、うつ病の診断補助などで活用されている。日本画像医療システム工業会(JIRA)が2015年12月9日に開催した研究会「精神疾患(認知症、うつ病)の予防と診断と治療-画像診断とロボット技術の応用-」では、群馬大学大学院 医学系研究科 神経精神医学 教授の福田正人氏が「NIRS(光トポグラフィー検査)を使った診断補助」と題して講演した。

講演する福田氏
講演する福田氏
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 まず福田氏は、「国民病」とする精神疾患について語った。従来、厚生労働省は患者数が多く、死亡率が高いなど緊急性の高い病気とそれらに対応するための事業として「4疾病5事業」を定めていた。4疾病とはがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病で、5事業とは救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療だ。

 これに、2013年から精神疾患が新たに加わり、「5疾病5事業」となった。うつ病やアルツハイマー病など精神疾患の患者数が増加し、それまで最も多かったがんの患者数を超えたためだ。

 自殺の背景に精神疾患があるケースが多いことも指摘した。自殺は2009年の人口動態統計の死因で7位、3.1万人となっている。近年は減少傾向にあるものの、交通事故と比べても数倍と高い数字で推移している。

 次に精神疾患の診断、治療の現状と課題について解説した。精神疾患は身体的な病気と異なり、症状が出てから診断するという特徴がある。例えば糖尿病であれば、血糖値が高いという検査結果から塩分を控えるといった予防の指導ができる。これに対して精神疾患は、症状が出る前に診断、予防するのは難しい。