2017年1月に発売されたフラッシュグルコースモニタリングシステム(FGM)のFreeStyleリブレ。糖尿病患者がいつでも非観血的に血糖値を測定できるという新製品で、新聞にも取り上げられるなど一般人の間でも話題になっている(日経デジタルヘルスの関連記事)。今年9月に保険適用となり普及に弾みがつくと予想されたが、実際には医療機関側の持ち出しになるため、導入に躊躇するケースが多いようだ。

写真1  FGMのFreeStyleリブレ(写真提供:アボットジャパン)。本体(写真右)の下部に血糖測定用の電極を挿入して、観血的な血糖自己測定器としても使用できる。センサー(写真左)を上腕の後ろ側に装着する
写真1  FGMのFreeStyleリブレ(写真提供:アボットジャパン)。本体(写真右)の下部に血糖測定用の電極を挿入して、観血的な血糖自己測定器としても使用できる。センサー(写真左)を上腕の後ろ側に装着する
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 FGMとは、腕部に装着した500円玉大のセンサーに本体をかざすと、血糖値が本体画面に表示されるという医療機器だ(写真1)。センサーを装着すると針(フィラメント)が皮下組織に挿入されたままの状態になり、フィラメントの先でグルコース濃度が測定される(図1)。間質液中のグルコース濃度が血糖値と相関することを利用し、血糖値の変動をシミュレートする。使い捨てのセンサーは、装着したまま入浴や運動も可能。14日間続けて使用できるので、14日間の血糖値の推移を途切れなく知ることができる。

図1 グルコース濃度の測定原理(出典:製品パンフレット、表1とも)
図1 グルコース濃度の測定原理(出典:製品パンフレット、表1とも)
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 センサーは1分ごとにグルコース濃度を測定し、15分ごとに測定値を記録する。測定値を確認するにはセンサーに本体をかざす必要があるが、測定値はセンサー内に8時間保存されるので、就寝前と起床時に測定すれば睡眠中の血糖値を知ることができる(8時間を超えると古い記録から順にデータが消える)。南昌江内科クリニック(福岡県福岡市)の南昌江氏は「これまで睡眠中の低血糖などを拾い上げることは難しかったが、FGMによって容易になった」とメリットを挙げる。これまでも持続血糖測定器(CGM)を使用すれば夜間低血糖の発見は可能だったが、数十万円と高額なため導入にはハードルがあった。

 FGMでは、測定値のデータのやり取りに交通系ICカードなどで使われる非接触通信技術(フェリカ機能)を使用して、コストを抑えたのが特徴だ。ちなみに、海外ではAndroidスマートフォン用の公式アプリが存在し、フェリカ機能を搭載したスマートフォンにインストールすれば本体のように使用することができる。残念ながら日本語版の公式アプリは公開されておらず、公式アプリ以外のサードパーティ製アプリ(開発元・販売元ではない企業が作成したアプリ)もあるが、販売元のアボットジャパンは動作を保証していない。

 非観血的に血糖値を測定するFGM機器は、日本ではFreeStyleリブレのみだが、海外では米シグナス社のGlucoWatch G2 Biographerがアメリカ食品医薬品局(FDA)の認可を受けている。この他、英メディワイズ社はGlucoWiseという製品を開発中で、日本ではライトタッチテクノロジー社が試作機の開発を目指している。また、ある世界的な大手医療機器メーカーも公表していないがFGM機器の開発を進めている。2018年以降、日本でも複数の製品がしのぎを削ることになりそうだ。