高齢者や交通弱者を救う

 なぜ、養父市でICTやドローンを用いた遠隔診療なのか。その背景には、同市で進行する人口減少や高齢化、中山間地特有の交通事情の悪さなどがある。

飛行実験を行った、養父市役所前の河川敷。写真右手方向に市役所がある
飛行実験を行った、養父市役所前の河川敷。写真右手方向に市役所がある
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 同市の人口は約2万5000人。最近15年で2割近く減少した。高齢化率は約35%に高まっており、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を患う市民も少なくない。

 総合病院が市内に1つしかないことに加え、谷沿いに集落が形成された中山間地であるため、病院や診療所へのアクセスが良くない。路線バスやコミュニティバスが市内を走っているものの、通院の足としての利便性は必ずしも優れない。結果として同市には、高齢者を中心とする「“交通弱者”が多い。こうした市民は医療機関にかかる機会をなかなか持てず、持病を重症化させやすい」(養父市 企画総務部 国家戦略特区・地方創生課 課長の谷徳充氏)。