国立循環器病研究センター 小児心臓外科部長・医療安全管理部長の市川肇氏
国立循環器病研究センター 小児心臓外科部長・医療安全管理部長の市川肇氏
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 「質感がとても実物に近い。ここまでくるとは」――。ある心臓のレプリカを手にした国立循環器病研究センター 小児心臓外科部長・医療安全管理部長の市川肇氏はこうつぶやいた。

国立循環器病研究センター 小児循環器・周産期部門長で小児循環器部長の白石公氏
国立循環器病研究センター 小児循環器・周産期部門長で小児循環器部長の白石公氏
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 このレプリカは、インクジェット技術を応用した3Dプリンターによる臓器造形システムで作ったもの。国立循環器病研究センター 小児循環器・周産期部門長で小児循環器部長の白石公氏とクロスエフェクト、SCREENホールディングス、共栄社化学が共同で開発したシステムだ。国立循環器病研究センターは2016年12月7日、同システムの開発について記者会見を開催した。

 国立循環器病研究センターとクロスエフェクトはかねて、患者のCT画像データと3Dプリンターを使い、小児の心臓形状を再現した心臓レプリカの開発と制作を進めてきた(関連記事 1 2)。これまでの手法はこうだった。まず患者のCT画像を撮影し、抽出した心臓のデータから光造形の3Dプリンターを使い、樹脂で心臓の硬質モデルを作る。これを基に形成した鋳型に真空下で硬度のウレタン樹脂を流し込み、臓器モデルを作成する。高解像度のデータ処理により、心臓の内部の血管構造や外側の筋肉を再現できた。

光造形の3Dプリンターで作った心臓の硬質モデル
光造形の3Dプリンターで作った心臓の硬質モデル
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鋳型を使用するこれまでのシステムで作成した心臓レプリカ。2018年をめどに実用化を目指している
鋳型を使用するこれまでのシステムで作成した心臓レプリカ。2018年をめどに実用化を目指している
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クロスエフェクト 代表取締役の竹田正俊氏
クロスエフェクト 代表取締役の竹田正俊氏
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 しかしこの手法では、臓器一つひとつに対して鋳型を作成する必要があり、最短で4~5日の制作期間を必要とした。量産化も困難だった。「小児は手術のタイミングが重要。今日明日、今週中に手術が必要な患者に、5日後に完成するモデルは使えない」(市川氏)。個別の鋳型が必要なことでコストもかかる。「症例によっても異なるが、臓器1つ当たりおよそ数十万円のコストがかかっていた」とクロスエフェクト 代表取締役の竹田正俊氏は話す。