3642症例で誤診なし

 東京慈恵会医科大学附属病院では、2015年に計3000台を超えるiPhoneを導入するなど、さまざまな医療業務のICT化を進めている。JoinもこのiPhoneを活用したプロジェクトの一環だ。

 実際にJoinを使った効果はいかなるものなのか。同病院では、Joinの導入前後で患者の入院日数や総医療費に変化が見られたという。具体的には、脳梗塞で搬送されてきた救急患者1人当たり、入院日数が1.6日、総医療費は6万円ほど減った(図2)。

図2●東京慈恵会医科大学付属病院におけるJoin導入前後の実績の比較
図2●東京慈恵会医科大学付属病院におけるJoin導入前後の実績の比較
脳梗塞での救急患者の1人当たりの値を示した(非手術例含む)(高尾氏の資料を基に本誌作成)
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 一方で、患者1人当たりの1日単価(医療費)は1400円アップした。入院日数と総医療費の変化も含め、「短期間に適切な処置を施せている結果だろう」と高尾氏は見る。

 また、Joinを使って医用画像を遠隔で確認した3642症例(2016年7月1日時点)において、診断に問題が発生した症例は1例も確認されていない。「救急時は細かな病状や種類をつぶさに知りたいわけではない。そもそも、今のスマホのディスプレーは、元々の医用画像が持つ解像度をはるかにしのいでおり、不都合は少ない」(高尾氏)。

 「Joinを使うことで、医療安全の向上にも貢献できる」と高尾氏は言う。「複数の医療関係者に情報が共有され、チャットのやり取りも記録に残る。ごまかしもきかない」(高尾氏)。