筋肉や骨、関節などの運動器に障害があるために、歩行や日常生活が困難な状態であるロゴモティブシンドローム。40歳以上の日本人の3人に1人が推定対象者といわれており、進行すると介護が必要になるリスクが高まることから、ロコモティブシンドロームを予防するロコモ体操が推奨されている。

「体操評価付き健康啓発ロボットシステム」。NAO(左上)とKinect(左下)、Pepper(右)から成る。
「体操評価付き健康啓発ロボットシステム」。NAO(左上)とKinect(左下)、Pepper(右)から成る。
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 ロボットを使ってロコモ体操を指導する動きもある。医療用ロボットアプリを手掛けるシャンティと北里大学 医療衛生学部 高平尚伸研究室が開発する「体操評価付き健康啓発ロボットシステム」がそれだ。同システムは神奈川県の公募型「ロボット実証実験支援事業」に採択されており、2016年11月24日に約20名の高齢者を対象にした実証実験を北里大学病院で行った。

Pepperが被験者に問診している様子
Pepperが被験者に問診している様子
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Kinectによるモーション解析イメージ
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 システムの全容はこうだ。日本整形外科学会が作成した「休まずにどの程度歩き続けられるか」などの項目について「Pepper」が被験者に問診し、簡易的にロコモティブシンドロームの度合い(ロコモ度)を測定。その結果を踏まえて適切な体操を提案する。Pepperの画面上に体操の動画を表示し、人型ロボット「NAO」が実際に動くことで体操を指導する。被験者が体操する様子を米Microsoft社のジェスチャー入力デバイス「Kinect」センサーでモーション解析し、体操が適正に実施されているかを判定。正しい動きでない場合は、PepperとNAOがリアルタイムに口頭で「もっと膝を曲げてください」などの指示をし、適切な体の動きへと誘導する。

ロボットシステムが被験者に体操を指導
ロボットシステムが被験者に体操を指導
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 今回の実証実験では片足立ちとスクワットの2種類の体操を用意した。これは「寝たきりになる前に必要な最低限の運動」だと高平氏は話す。人が歩く際には必ず片足立ちの状態になり、椅子から立ち上がる際にはスクワットと同じ体勢になるためだという。「簡単な運動にすることで、覚えて帰って家でも続けてもらうという狙いもある」(高平氏)。