特定地域の住民を対象に、環境要因と疾病の相関などを長年にわたり追跡調査する、コホート研究。その手法が今後、ガラリと変わるかもしれない。サービス事業者が、一般消費者を対象にインターネットを介して提供する遺伝子検査サービスや、それに付随するウェブアンケート。これらを疫学研究に活用する「インターネット・コホート」とでも呼ぶべき手法が、現実味を帯びつつあるのだ。

ヤフーでHealthData Labプロジェクトを担当する井上昌洋氏
ヤフーでHealthData Labプロジェクトを担当する井上昌洋氏
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 一般向け遺伝子検査サービスを共同で手掛けるヤフーとジーンクエストは2015年10月末、そうしたトレンドに先鞭をつける研究成果を公表した(関連記事1同2)。同サービスの利用者1万人の遺伝子情報を、産業技術総合研究所とともに解析した結果だ。京都府で開催された「生命医薬情報学連合大会2015年大会」で2件のポスター発表を行った。

 2014年に参入が相次いだ一般向け遺伝子検査サービス。収集・解析した遺伝子情報を学術研究に応用した事例は、日本国内ではこれが初めてだ。

 両社が発表したのは、一般向け遺伝子検査サービスで集めたデータの品質が従来のコホート研究に劣らないこと、そして従来得られていた疫学的知見を今回の手法でも再現できたこと。インターネットという極めて身近でカジュアルなツールが、コホート研究の有力な手段になる可能性を示した形だ。