「健康増進を図れる調理器を提案していきたい」。発表会に登壇した同社 代表取締役社長の菊池嘉聡氏はこう意気込む。この領域で、2018年度に108億円、創業100周年を迎える2023年度には200億円の売り上げを目指す考えだ。
咀嚼回数と嚥下回数が少ないご飯
発表会では、具体的な取り組みの一つとして高齢者が飲み込みやすい「さらっとご飯」を炊飯できるIH炊飯ジャーの開発について紹介した。2018年度の商品化を目指している。
高齢者は、筋力の低下によって気管に食べ物が入ってしまい、誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなる。そのため、介護施設などでは炊飯時の水加減を増やし、軟らかめのご飯を提供している。しかし、ただ水加減を増やしただけでは、「ご飯粒からでんぷんが流出してベタベタした糊のようになり、軟らかいが口の中にくっついて残りやすくなる」と兵庫県立大学 環境人間学部 教授の坂本薫氏は指摘する。ご飯の水分量が多いと100g当たりのエネルギー量が減り、必要な栄養量が確保しにくいという課題もあった。
そこで、タイガー魔法瓶はかねて、飲み込みやすく誤嚥しにくいご飯の研究を兵庫県立大学の坂本氏と共に進めてきた。開発中の炊飯ジャーは、飲み込みにくさの原因である“べたつき(おねば)”を取り除く機能を搭載する。これにより、さらっとご飯を炊くことができるのが特徴だ。 さらっとご飯と、水加減を増やしたご飯を比較すると、さらっとご飯の方が軟らかくて凝集性が高く(まとまりやすく)、付着性が低い(ベタベタしない)ことが確認できたという。筋電位を測定し、咀嚼回数と嚥下回数を調べたところ、「さらっとご飯の方が咀嚼回数、嚥下回数ともに少ないことも分かった」と坂本氏は話す。