インフルエンザの流行時期が、今年も近づいてきた。例年、年間を通じて日本人の約1割が感染するとされる。厚生労働省などが、定期的に発生状況を発表してはいるものの、罹患者数やワクチン接種者数、地域別動向などの実態には未知の部分も多い。最近ではインターネットの検索キーワードによる調査なども行われているが、罹患者の絶対数などを精度良く見積もることは難しい。

 こうした状況を受けて、インフルエンザの流行実態をiPhoneを使って全国規模で調査し、予防や治療戦略につなげることを狙った臨床研究を、順天堂大学 医学部総合診療科 准教授の藤林和俊氏らが2016年11月に開始する(プレスリリース)。活用するのは、米Apple社のオープンソースフレームワーク「ResearchKit」を用いて開発したiPhoneアプリ「インフルレポート」。「特定地域を対象とする従来の疫学研究は、インフルエンザ罹患者の母集団を推測する方法としては限界があった。全国に数千万人規模のユーザーが存在するiPhoneを使うことで、真実に近づけると考えた」(藤林氏)。

順天堂大学 医学部総合診療科 准教授の藤林和俊氏
順天堂大学 医学部総合診療科 准教授の藤林和俊氏
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 研究ではまず、インフルエンザワクチンの接種状況などを利用者に問う簡単なアンケートをアプリ上で実施。その後、利用者やその同居者がインフルエンザに罹患した場合に、その時の症状や処方された薬剤などに関する追加のアンケートに答えてもらう。インフルエンザの罹患状況やワクチン接種状況などは1カ月ごとに確認する。

 これらと併せて、利用者の住まいの郵便番号または本人同意のもとGPSで収集する位置情報、居住地域の気温や湿度などの環境情報、歩行速度なども集める。これらの情報を統合的に解析することで、インフルエンザの罹患者数や地域別の動向、ワクチン接種の効果、罹患の危険因子などを明らかにすることを狙う。