患者の不調時対応の確立が課題

 CLINICSを利用した遠隔診療に取り組んで8カ月が経過した今、その課題について来田氏は、従来は対象としていなかった“予定されていない遠隔診療”をどのように運用するかだと語る。前述の保険外診療である医療相談も含め、どのように実施していくべきか検討していきたいとする。

新六本木クリニック院長の来田氏。日本遠隔医療協会が開催したワークショップ(2016年9月18日開催)で講演した
新六本木クリニック院長の来田氏。日本遠隔医療協会が開催したワークショップ(2016年9月18日開催)で講演した
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 また、患者の不調時の対応をどう確立するかも重要な課題に挙げる。「診療を続けていると必ず生じる不調時に、受診を促せば済むのかどうか、往診すべきなのか、あるいは救急要請すべきかといった対応方法を確立することは難しい。臨床医が患者に不利益を与えないことが運用の大前提であり、検討を重ねる必要があると考える」(来田氏)。

 一方、遠隔診療による診療報酬に関しては、現在は処方箋による投薬の実施に伴う処方箋料と、電話等再診による診療報酬と同様の扱いで算定している。しかしながら、精神科専門療法(在宅通院精神療法など)を遠隔診療で算定できない中で運用していることもあり、対面診療よりも遠隔診療が安価になる、通院の負担もなくなるという理由で、「患者は、できるだけオンライン診療を望むようになる」(来田氏)と指摘する。

 こうした状況を生まないようにするための1つの方法として、同クリニックでは自由に設定できる選定療養費の予約料を徴収し、通常の対面診療で生じる診療費よりも高くなるように設定している。「こうすることで、患者の受診行動をある程度コントロールしているのが現状」(来田氏)とし、診療費の設定も検討の余地はあるとみる。

 これらの課題を踏まえ、「多くの患者に遠隔診療を利用してもらいながら、治療を途切れさせない、あるいは早期の受診に結びつけることで、患者に利益を還元できる運用を検討していかなければならない」と来田氏は語る。