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人工知能はどこまで医師をサポートできるのか(page 4)

2016/10/17 04:00
加納 亜子=日経メディカル
出典: 日経メディカルOnline,2016年10月14日 , (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 ホワイト・ジャックは、患者の症状から複数の鑑別疾患を挙げ、各疾患である確率も算出しようというもの。「総合診療医が患者の症状から鑑別疾患を挙げて診断を行う流れをAIで実現しようと考え、開発を進めている」と説明するのは、開発責任者の石川鎮清氏(自治医科大学地域医療学教授)だ。希少疾患の鑑別を目的としているのではなく、臨床医が日常診療で使えるようにコモンディジーズを鑑別するシステムの開発を目指している。

 AIに学習させるのは、自治医大に蓄積された8000万件の診療情報やレセプトデータの他、患者の居住地や気象情報、鑑別の感度・特異度に関する情報が含まれた論文や教科書情報など。そこに新たに来院した患者の予診、問診、検査に関するデータを入力すると、鑑別疾患のリストとそれぞれの確率を提示する。

 また、登録した情報や鑑別疾患とした挙げた疾患とその確率などのデータを自動で記録しながら、追加で得られた臨床所見や検査結果を踏まえて同じ症例で繰り返し臨床推論をすることができる仕組みとなっている。

 患者が来院してからホワイト・ジャックが鑑別疾患を挙げるまでの流れは以下の通り(図2)。

図2 ホワイト・ジャックの仕組み
(石川氏による)
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(1)来院後、決まったフォームの予診票に患者が自ら、氏名や年齢、来院理由や主訴、既往歴などを登録する。患者が入力した情報はそのまま電子カルテと院内のデータベースにそれぞれ自動で登録される。

(2)患者が登録した予診票の内容を基に医師が問診を行う。医師は問診や診察で得た身体所見を電子カルテに登録。加えて、予診票の記載漏れや誤った登録内容を確認して修正する。

(3)医師がホワイト・ジャックの「診断結果」ボタンを押すと、可能性の高い鑑別疾患が確率と共に示される。併せて、確定診断や鑑別に必要な検査項目、その疾患と診断された患者が処方された薬剤も表示される。

(4)実施した検査結果や、追加で得られた臨床所見・問診結果の情報を追加で登録し、改めて「診断結果」ボタンを押し、ホワイト・ジャックが提示する疾患とその確率の変化を参考に医師が診断を付ける。

 「最終診断の責任は医師が負わなければならない。そのため、最終診断を示す機能はあえて付けていない。症状から考えられる重篤な疾患や見落としてはならない疾患の拾い上げを目的に使うものと捉えてほしい」と石川氏は言う。問診や検査結果などの情報を加え、ホワイト・ジャックに繰り返し臨床推論をさせると、鑑別疾患として挙がる疾患と、その確率が変動する。「推論結果の変化が医師の診療の参考になると考えている」と石川氏は説明する。

 石川氏らが想定する利用者は、他科の医師に相談できないような僻地で診療をしている医師や、開業医、救急外来の当直医。医学教育などにも活用することも想定しているという。

 高齢化が進めば、複数疾患を抱えて複数の症状を訴える患者がさらに増えることが予想される。総合診療医のニーズは一層高まるが、総合的な鑑別のトレーニングを受けている医師は少ない。「今の総合診療医の数ではニーズに対応できなくなると考え、臨床医を手助けする仕組みを作ろうと考えた」とホワイト・ジャックの開発の中核を担う藍原雅一氏(自治医科大学地域医療学センター地域医療情報学部門講師)は開発の目的を語る。「ほぼ100%この疾患だろうと想定していても、本音では誰かに同意してほしいと、どの医師も感じるもの。あくまで医師の診断を助けるツールという位置づけで、日常診療に役立ててほしい」と石川氏も話す。

 診療所や病院など広く活用できる仕組みとして実用化できれば、「医療機関同士での患者情報の共有や紹介もスムーズになり、さらには無駄な検査や重複する薬剤の処方をなくすこともできるだろう。データが蓄積されれば地域特性なども明らかにすることも期待できる」と藍原氏は期待する。

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