精神科の在宅医療に取り組む愛知県大府市の特定医療法人共和会共和病院。精神科に特化した訪問看護ステーションの新設にあたり、FileMakerをプラットフォームとした精神科在宅医療向けの訪問看護記録システムを自院で開発し、運用している。利用者宅訪問の際、看護記録を出先で入力することで、記録業務を効率化、ステーション帰所後の記録作成による残業ゼロを実現している。

 2018年に創立60周年を迎える共和病院(精神病床207床、内科療養病床80床)は、精神障がい者への医療を中心に常勤の内科医による身体合併症、医療、そして認知症を含めた高齢者医療を提供し続けてきた。かつて374床あった施設も厚生労働省が2004年に掲げた精神科医療改革に伴い、地域への移行を進め、精神科病床削減に取り組んできた。現在、2019年度中の完成を目指して建て替え工事を進めており、最終的には精神病床195床、療養病床80床まで削減する計画という。

 精神科救急病棟の新設による受け入れ体制の整備や障がい者向けケアホームの開設などにより地域移行を促進しているが、地域の受け皿不足の課題はつきまとう。特に名古屋市中心部へ電車で20分程度の大府市は近年移住してきた若い世代が多く、障がい者が集団生活する施設の新設に理解を得ることがまだまだ難しいという。「この地で60年にわたって精神科医療を提供してきたので、支援していただいている地域の方々や行政と協力しながら、できるだけ生活の場を地域にという姿勢で臨んでいます」(共和会本部本部長の桐山順三氏)と話す。

共和会本部本部長の桐山順三氏
共和会本部本部長の桐山順三氏

 共和会が進める在宅移行への取り組みも、その一環である。2017年5月にJR共和駅前にサテライトクリニックの「共和駅めんたるクリニック」を開設したのに続き、同年7月には近隣の知多市に、精神科疾患に特化した訪問看護ステーション「アイリス」を新設した。このアイリス開設に伴って構築したのが、スマートデバイスを利用した訪問看護記録システムである。開発に当たって用いたのが、FileMakerプラットフォームである。iPadで利用できる無料アプリFileMaker Goが含まれ、スマートデバイスへの展開が容易だ。

 共和会は病院の隣に内科系の訪問看護ステーション「ソレイユ」を開設しているが、訪問看護記録は現在、複写式帳票に手書きで行っている。新設するアイリスでは、スマートデバイスを用いて記録業務の効率化を進めることになった。