曇り抑える素材が決め手

 西垣氏が、産学医の連携事業を支援する「次世代医療システム産業化フォーラム」(主催:大阪商工会議所)を通じて知己を得たのが、今回の発表会に登壇した宇都宮製作 代表取締役副社長の大西浩太郎氏(関連記事)。そして、デザイナーの育成やデザインの事業化を目指す大阪府の取り組み「デザインサポートプロジェクト」で知り合ったのが、アイウエアの製品デザインなどで知られるプロダクトデザイナー、インテリジェントウェアの大浦イッセイ氏だ。

「アンチ・フォッグ・フィルム」やβチタンフレームを採用
「アンチ・フォッグ・フィルム」やβチタンフレームを採用
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 3者の共同開発では、「ユーザー中心のものづくりを重視している」と話す大浦氏が、医療現場のニーズを西垣氏らからくみ取って製品デザインを進めた。「眼を守ることは命を守ること。(運転手が)シートベルトを着けるのと同じように、感染予防は命を守る人(医療従事者)の責任だと思ってほしい」(大浦氏)。そんな願いをデザインに込めたという。

 開発の決め手となったのは、息による曇りをほぼ完全に抑えられる使い捨てのフィルム素材「アンチ・フォッグ・フィルム(anti fog film)」。いわば自ら「吸水して蒸発させるというプロセスを繰り返す素材。これが使えると分かったことでモチベーションがぐっと高まった」(大浦氏)。同素材は防曇性能が高く劣化しないことに加え、透過率は約90%と眼鏡用レンズ並みに高いという。