「デザインの良さという観点は、これからの医療用製品開発のトレンドになる可能性がある」(国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター長の妙中義之氏)――。

パラシールド(Parashield)を装着した、国循の西垣氏
パラシールド(Parashield)を装着した、国循の西垣氏
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 国立循環器病研究センター(国循)とプロダクトデザイナーがタッグを組み、医療従事者が病院内で眼鏡のように“普段使い”できるアイウエアを開発した。医療用マスク/手袋などの衛生用品を手掛ける宇都宮製作(東大阪市)が2015年9月25日から製造・販売する医療用アイウエア「パラシールド(Parashield)」がそれだ。医療従事者の眼が、患者の血液や体液に曝露されることによる院内感染(職業感染)を抑える医療雑貨である。国循と宇都宮製作、インテリジェントウェアの3者が同年9月24日、同製品の発表会を東京都内で開催した。

「眼の感染予防」に潜在ニーズ

 「デザインによって解決できるニーズは、医療現場にはたくさんある」。国循側の開発メンバーで、製品発表会に登壇した西垣孝行氏(国循 臨床工学部 臨床工学技士/臨床検査技師)は言葉に力を込めた。そうしたニーズの1つが「数字として表れにくい」(同氏)院内感染に関するものだった。

 同氏が示したある調査データによれば、回答した医療従事者の66.8%が、患者の血液や体液に自身の眼が曝露された経験を持つと答えた。曝露時、ゴーグルやフェイスシールドを装着していた回答者は10%未満。回答者の12%は曝露時に眼鏡を装着していたが、その曝露防止効果は薄かった。

 眼の防護用品(アイガード)の装着は、WHO(世界保健機関)によって医療従事者に対して推奨されているものの、実際の医療現場では「個人の判断にゆだねられている」(西垣氏)。息で曇って視野がさえぎられる、装着に手間がかかり面倒くさい、眼鏡で十分保護できる…。そんな認識ゆえに、アイガードを装着しない医療従事者が大半だという。「眼の感染予防は必須ではない。そんな現場の認識にこそ、潜在的医療ニーズがある」(同氏)。