信州大学が開発する「curara」。利用者の動作を検知して歩行をアシストするロボットだ(関連記事)。その最新モデルとなる4号機が2017年9月20日、都内で披露された。

 curaraは、利用者が“着る”というコンセプトのロボット。開発チームは“ロボティックウエア”と位置付けている。実際、今回の4号機は、衣服の上からロボットを装着する「スタンダードモデル」に加え、ズボンとロボットが一体化している「パンツモデル」も用意した。

curara4号機パンツモデル(左)とスタンダードモデル(右)
curara4号機パンツモデル(左)とスタンダードモデル(右)
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curara4号機のパンツモデル内部
curara4号機のパンツモデル内部
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curara3号機のスタンダードモデル(左)とパンツモデル(右)
curara3号機のスタンダードモデル(左)とパンツモデル(右)
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 4号機の基本動作には、3号機同様に人の動きに合わせる同調制御法を採用した。これは、一定のリズムを生成する神経振動子を用いて動きを制御することで、人の「動きたい」程度に合わせて歩行をアシストすることを可能にする技術である。

 人の動きの検出には、相互作用トルク検出法を用いる。具体的には、トルクセンサーで人とロボットの間に生じる力を検出することで人の動きを感知する。電極を体に貼り付ける必要なく、人のわずかな動きも検出することができる。

 一方、今回の4号機は、ユーザーの使いやすさを重視して3号機に対して5つの改良を加えた。(1)小型・軽量化、(2)快適な装着感、(3)患者一人で着脱可能、(4)ユーザーインタフェースの改良、(5)歩行状態の評価、である。

 (1)の小型・軽量化に関しては、3号機に比べて1kg軽量化した。スタンダードモデルは4kg、パンツモデルは5kgである。動作制御を行うコントローラーに関しても、3号機では2.2kgであったのに対し、4号機は1.4kgに軽量化した。その結果、3号機はコントローラーを背負う形状だったが、4号機では腰部分に設置することができるという。

 (2)の装着感に関しては、歩行をアシストする際にモーターを使って力を作用させる関節フレームの形状を変えた。具体的には、まっすぐ下に伸びる形状だったものを、足の前面に力が作用するように変えた。フレームの背面部分を取り除けるため、利用者が自由に座ることができるようにした。発表会では、研究グループの学生がcuraraを装着して会場を歩くデモンストレーションが行われ「着心地に違和感はなく、重さはあまり感じない」という感想を述べた。

 (3)の患者一人での着脱については、専用の椅子を開発することで実現した。発表会では椅子を使ってスタンダードモデルを着脱するデモンストレーションが行われ、わずか17秒で取り外し、およそ1分で装着することができる姿を披露した。

ベルトの締め付けを調節できるダイヤル
ベルトの締め付けを調節できるダイヤル
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 (4)のユーザーインタフェースの改良に関しては、ベルトの締め付ける力をダイヤルで調節できるようにした。軽い力で装着できるようにしたため、患者でも簡単にベルトを締めることができるという。さらに、歩行時に生じる音も小さくした。モーターに搭載する減速機をハーモニックドライブ減速機から遊星減速機に変えることで実現した。

 (5)歩行状態の評価に関しては、専用のモバイルデバイスを用いることで歩行状態の計測を可能にした。curaraにはジャイロセンサーが搭載されているため、膝関節や股関節の角速度を可視化することができる。