新規の原因遺伝子変異を同定するための情報を提示

 解析した遺伝子変異データとコントロール(健常対照群)データ、既知の病的変異データなどとの照合を行って新規の難聴遺伝子変異を同定していくために、「Case Viewer」と「Variant Viewer」という2つの画面が用意されている。

 「Case Viewer」は、解析した症例ごとに候補遺伝子変異を自動的にフィルタリングして表示する画面。例えば、候補として見出された遺伝子変異に関して、過去に病的変異として報告されたデータがないものの、健常コントロールには存在せず、難聴患者の中に相当数見つかっていれば、新たな病的な遺伝子変異として同定できる。

case-viewerの画面
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 一方、「Variant Viewer」は、自動抽出された候補遺伝子変異について、その遺伝子変異を持っている人はどのような患者さんであるか見るための画面。アノテーション情報やin silico予測データ(構造予測プログラムを使って、その遺伝子が変異することで作られるタンパク質がどのような影響を受けるかを予測するスコア)などを表示する。

variant viewerの画面
variant viewerの画面
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 「現在、次世代シーケンサーを用いた約2600人の遺伝子変異の解析により、データ量は100万件を超えています。その中から候補となる遺伝子変異を抽出し、病的遺伝子変異を同定するためにFileMakerを用いて構築した難聴遺伝子変異データベースは非常に有用性が高いと言えます」と西尾氏。

 今後、約8000人分の検体のうち、残りの5000を超える検体を次世代シーケンサーで解析し、データベースに追加していくことになる。「さらに膨大になる難聴遺伝子変異データから、効率的に病気の原因と考えられる遺伝子変異を同定することによって、より多くの情報を臨床にフィードバックしていくことが可能となります」(宇佐美氏)という。今後、解析遺伝子種類・変異数を増やしていくことは、診療現場での確定診断率向上に大きな役割を果たすことになる。

■施設概要

名称:
信州大学医学部耳鼻咽喉科学講座
所在地:
長野県松本市旭3-1-1
Webサイト:http://www.shinshu-jibi.jp
担当教授:宇佐美真一氏
主要導入システム:ファイルメーカー「FileMaker Pro、FileMaker Server」