実は網羅率が高い医療情報基盤が整備されている久米島

 沖縄県は、かつては“長寿日本一”の県として知られた。ところが近年、その状況は大きく変わった。食生活などの生活習慣の変化を背景に「健康長寿ブランドの栄光の座から、急速に滑り落ちている」と、プロジェクトを指揮する琉球大学大学院 医学研究科 教授の益崎裕章氏は話す。

 同県の離島として4番目の面積を誇る久米島の状況はとりわけ深刻だ。2016年度特定健診受診者(40~74歳)の44%が肥満(BMI25以上)で、この割合は全国平均の1.5倍に近い。メタボリックシンドロームの割合も約30%と、全国平均(20~25%)を上回る。「肥満症や生活習慣病が明らかに増えている」(益崎氏)状況にある。

久米島町長の大田治雄氏
久米島町長の大田治雄氏
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 肥満は子供達にも広がっており、男子中学生の肥満率は全国の平均的な地域の約1.5倍、女子中学生では約2倍に達している。「肥満などを若いころから改善できる仕組みが必要だ。実証の場を提供し町を挙げて取り組みたい」と、久米島町長の大田治雄氏がプロジェクトに期待を寄せるのもこうした背景からだ。

 実証の舞台に久米島を選んだのには、もう一つ理由がある。健康不安が広がっている一方で、この島には「医療IT先進アイランド」(益崎氏)という側面がある。町民が受けた健康診断や医療機関での診療・検査・処方のデータを集積した「LHR(lifelong Health Record)」と呼ぶ網羅率の高い医療情報基盤が整備されている。全島にわたりWi-Fiが整備され、スマートフォンアプリやセンシングデバイスを使って日々のバイタルデータなどを収集しやすい環境にもある。