ICU部門システムからデータを直接取得

 JIPAD Internalは、重症患者管理部門システムやDWH(Data Warehouse)が吐き出すCSV形式データの読み込み機能とODBC(Open Database Connectivity)連携により直接データを取得する仕組みを備え、暗号化、匿名化した患者データファイルを出力してJIPAD Localに引き渡す。JIPAD Localはインターネット上でSSL/TLS1.2通信によって安全にJIPAD Globalにデータを送付する。これらすべてがFileMakerプラットフォームによって構築されており、施設側のシステムを含めて学会から提供されている。

 現在、一部の学会ではFileMakerを活用した自動症例登録が行われているが、多くの症例登録データベースでは、参加施設のデータ入力はインターネット接続された端末でWebシステムに手入力するケースがほとんどである。このため電子カルテなど病院情報システムからデータを抽出して登録する作業や、その仕組みづくりについては、多くの施設が苦労を強いられているのが現状だ。多忙なICU部門スタッフの手をできるだけ煩わせずに多くの症例を収集するため、病院情報システムから直接データを取り込めるアプリケーションを提供できるFileMaker プラットフォームをJIPADに選択した。

 一方、日本集中治療学会は、各施設の重症患者管理部門システムや電子カルテとJIPAD Internalがデータ連携できるようにするため、これらのシステムを提供しているベンダーと直接交渉して、対応できる環境の整備に努めてきた。現在、日本光電の「CAP-2410」「Prime Gaia」、フクダ電子の「Mirrel」、富士フイルムメディカルの「Prescient」、富士通の「HOPE EGMAIN-GX」(重症系部門システム)、ソフトウェア・サービスの「e-カルテ」がCSV出力に対応、フィリップスの「PIMS」「ACSYS」がODBCデータ連携に対応している。

 なお、JIPADには、登録データ以外のデータを施設ごとに記録できる「ExJIPAD」と呼ぶ機能も提供されている。

 学会から提供されるJIPAD Internalとは別に、FileMakerで独自のICU患者管理システムを構築して利用している施設もある。京都府立医科大学附属病院はその1つで、JIPADへのデータ出力だけでなく、ICU患者の記録を管理する「ICU台帳」と呼ぶシステムを構築し、運用している。同システムは患者の日々の記録であるICU Daily Summaryと全体の経過を総括したICU Main Summaryで構成され、いずれもPDFファイルを病院情報システムに送信されている。

京都府立医科大学附属病院が構築した「ICU台帳」。ICU部門システムから自動でデータ取得し、データがそろった時点でJIPAD Internalに送付する
京都府立医科大学附属病院が構築した「ICU台帳」。ICU部門システムから自動でデータ取得し、データがそろった時点でJIPAD Internalに送付する
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 同病院の集中治療部では、フィリップスの集中治療患者情報管理システム「ACSYS」を導入している。同システムのデータベースはSQL Serverで構築されており、ベンダーに依頼してデータのビュー作成し、ODBC接続によりICU台帳にデータを取得している。