指先を挿入するだけでAGEsの蓄積レベルを簡単に測定できる
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 シャープ関係会社のシャープライフサイエンスは2017年8月4日、体内に蓄積すると生体に悪影響を及ぼすとされる最終糖化産物(AGEs:advanced glycation endproducts)の蓄積レベルを、指先を挿入するだけで非侵襲で測定できる「AGEsセンサ」を発売した。シャープがヘルスケア・メディカル関連事業を親会社の鴻海精密工業との共同出資体制に改めてから、第1弾となる新製品。シャープはこれを皮切りに、“未病”領域を中心とするヘルスケア分野に本格参入する。

 シャープライフサイエンスは4日、大阪市内で新製品発表会を開催。登壇した同社副社長の北村和也氏は「ヘルスケア・メディカル分野をしっかりと立ち上げ、伸ばしていきたい」と抱負を述べた。この分野では「未病がキーワードであり、普段の状態を把握して将来の病気に備えるために、これまで見えなかったコトを見える化していく。(シャープが)光ディスク用ピックアップやカメラモジュール、各種センサーで培った要素技術を、無拘束・非侵襲の生体センシングに展開する」(北村氏)。

シャープライフサイエンス 副社長の北村和也氏
シャープライフサイエンス 副社長の北村和也氏
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 シャープは2017年3月に、ヘルスケア・メディカル関連事業の一部を鴻海と共同出資する持株会社の傘下に置く体制に改めた。シャープライフサイエンスは持株会社傘下の事業会社の一つで、鴻海出身の林家慶(リン・カケイ)氏が代表取締役を務める。鴻海の経営参加により「経営判断のスピード感が増した」(北村氏)。同社はこれまでは、たんぱく質分析装置や微生物センサーを主力としてきた。今後力を入れるヘルスケア分野向けの第1弾製品として今回、AGEsセンサを発売した形だ。

 AGEsセンサの「AGEs」とは、体内で糖とたんぱく質が結合して生成される物質の総称。偏った食生活や運動不足など、生活習慣の乱れによって体内の糖が過剰になるとAGEsの生成が加速され、血管や骨、皮膚などの組織に蓄積される。近年このAGEsが老化現象などに関わることが知られるようになり、健康状態の新たな指標として医療や美容、食品などの分野で研究が進められているという。

東海大学 農学部 バイオサイエンス学科 教授の永井竜児氏
東海大学 農学部 バイオサイエンス学科 教授の永井竜児氏
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 発表会には、AGEsと疾患の相関に関する臨床研究を数多く手がけ、今回のAGEsセンサについてもシャープとの共同研究を進めてきた東海大学 農学部 バイオサイエンス学科 教授の永井竜児氏が登壇。動脈硬化や糖尿病合併症などを引き起こす「糖質の代謝異常によってAGEsの生成が進むことが分かってきた。動脈硬化などの血管疾患は治療が難しいことから予防が重要。AGEsを簡便に測れる今回のセンサーが、いち早い気づきや意識向上につながることに期待したい」と述べた。

 AGEsは、血糖値と相関があることも明らかになっている。血糖値が高い人ほど、AGEsの蓄積レベルも高い傾向にある。ただし、血糖値のマーカーである「HbA1cは、糖尿病の合併症のマーカーにはなりにくい。対してAGEsは合併症と有意な相関があり、その蓄積レベルから合併症の有無を推定できる」(永井氏)メリットがあるという。