「米国の『Precision Medicine』に負けたくないという思いで取り組んできた。最先端の個別化医療を、ここ日本で実現したい」(国立がん研究センター 東病院 呼吸器内科長の後藤功一氏)――。

 国立がん研究センターは2016年7月12日、がんを引き起こす遺伝子異常を全国規模で効率的にスクリーニングし、患者を治療薬の治験に導いたり、新しい治療薬の開発につなげたりするプロジェクト「SCRUM-Japan」の成果報告会を、東京都内で開催した。中心研究者の1人、同センターの後藤氏は、個別化医療の取り組みで先行する米国への対抗意識をあらわにした。

登壇した後藤氏
登壇した後藤氏
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 SCRUM-Japanは国立がん研究センターが2015年2月に立ち上げたプロジェクトで、現在までに製薬企業15社と200施設を超える医療機関が参加している(関連記事)。次世代シーケンサーとマルチプレックス診断法による遺伝子解析を利用し、肺と消化器のがんゲノムを全国規模でスクリーニング。これまでは個別化医療の対象となりにくかった希少な遺伝子異常を持つ患者を治験に導くとともに、新薬開発につなげる。2017年3月までがその第1期だ。

 報告会には、プロジェクトの実施主体である国立がん研究センター 東病院長の大津敦氏が登壇。2016年6月時点までの登録症例数が3240となり、新薬開発を目的としたゲノムスクリーニングとして「世界最大規模」(大津氏)になったと話した。3240例のうち肺がんが1177例、消化器がんが2063例を占める。

 プロジェクトのこれまでの成果として大津氏は、次の4つを挙げた。(1)大規模ゲノム疫学データの取得、(2)医師主導治験の結果を受けた、薬事承認申請に向けたPMDAとの相談の開始、(3)高セキュリティーのデータストレージシステムの構築、(4)ゲノム情報のオンラインデータ共有の開始。