承認取得へ明るい兆し

 これら4分野の取り組みに加えて、NVIDIA社は2016年11月、がん克服を目指す米国のプロジェクト「Cancer Moonshot」に参加し、米国立がん研究所(NCI)や米国エネルギー省(DOE)と協力すると発表した。「CANDLE(Cancer Distributed Learning Environment:がん分散学習環境)」と呼ぶ、がん研究のためのAIフレームワークを開発する。

がん克服に向けたプロジェクトに参画(資料提供:エヌビディア)
がん克服に向けたプロジェクトに参画(資料提供:エヌビディア)
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 この開発では、DGX-1を124台並列化したクラスターを活用するという。がんのDNAやRNAに存在する遺伝子シグネチャの発見支援や、たんぱく質の相互作用の分子動力学シミュレーションによるがん発生メカニズムの理解、数百万件に及ぶ臨床記録からの情報抽出と分析を通じたがんの包括的データベースの構築などに挑む。

 今後、AIが医療に活用されるようになるためには、規制当局による承認をクリアすることも大きな課題になる。この点については、海外の複数企業のディープラーニング診断支援技術が米国FDAや欧州CEの承認を取得するなど、前向きな動きがあるとエヌビディアの山田氏は指摘する。日本でも「PMDA(医薬品医療機器総合機構)の議論にAIが入ってくるだろう。思ったよりも(AIによる診断支援技術が薬事承認を取得するまでの)時間が前倒しされるのではないかと感じている」(同氏)。

 一方で、医療には他分野と比べてディープラーニングに必要な量のデータがそろいにくいという難しさもあるという。データの中身についても、後方視的(レトロスペクティブ)な解析だけでなく、前向き解析のためのデータをそろえていくことが課題になると山田氏は話している。