電子カルテやゲノムの解析、創薬にも

 (2)の医療情報分野では、電子カルテやDPC(診断群分類別包括評価)などの解析や予測モデル作成に、ディープラーニングを活用する。医療記録から疾患発症を予測したり、処方・投薬を最適化したりすることで、医療費削減や医療水準の均てん化につながると期待される分野だ。

 例えば米国の小児病院では、バイタルデータからの転帰予測にディープラーニングを活用する試みが始まった。日本でも、NVIDIA社のDGX-1を活用した医療情報の解析研究が始まっているという。

 (3)のゲノム研究分野では、遺伝子変異などのメカニズム解析や、遺伝子変異と臨床状態(フェノタイプ)の相関解析にディープラーニングが活用されつつある。日本では一部の研究機関にDGX-1を納入済みで、ゲノム研究の環境整備に向けた新規案件もいくつか進行中という。

ディープラーニング向けスパコンを提供(資料提供:エヌビディア)
ディープラーニング向けスパコンを提供(資料提供:エヌビディア)
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 (4)の創薬分野は「製薬会社が幅広い用途にAIを使いたいと考えている」(山田氏)ことから、大きな成長が期待される。薬のターゲットとなるたんぱく質の構造予測のほか、AIの自然言語処理を用いた論文からの重要情報抽出、薬の製造工程における各種反応のAIによる制御、市販後薬の副作用情報のAIによる分析など、さまざまな用途が検討されている。

 欧米ではたんぱく質の立体構造解析に基づく「手探りではない構造ベースの創薬が加速している」(山田氏)のに対し、日本勢は出遅れぎみ。ディープラーニングなどの活用による巻き返しを促していく。