皮膚機能や引っかき行動の評価に

パッチテストの結果
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筋電位を計測
筋電位を計測
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 実際に生体情報を計測できることも確認した。腕にナノメッシュ電極を貼り付けて筋電位を計測したところ、一般的なゲル電極と比べてそん色のない信号/雑音比で計測できた。ナノメッシュ電極を無線通信ユニットやセンサー素子と組み合わせ、温度や圧力、金属に触れたり離したりした時の抵抗値変化を測ることにも成功している。

 皮膚とともに伸縮させても導電性を失わないことも、ナノメッシュ電極の特徴だ。皮膚に貼り付けて伸縮を1万回繰り返しても、抵抗値はほぼ変化しなかった。

 実用化に向けては、機械的耐久性などを高めることに加えて、「さまざまな材料にエレクトロスピニング法を適用し、電極や配線以外の高度な電子機能を(ナノメッシュ構造で)実現する」(染谷氏)ことを目指す。軽量で軽く、炎症反応を起こさないという性質を保ちつつ、電極だけでなくセンサー機能全体を皮膚に貼り付けられるようにする狙いだ。

 慶応大学の天谷氏は皮膚科専門医の視点から、ナノメッシュ電極について2つの応用に期待を寄せているという。一つは、皮膚からの水分蒸散量や角層pH、皮膚表面温度など、皮膚に関する生体情報を経時的にモニタリングする用途。「日常のさまざまな環境における皮膚のバリアー機能を評価できる」(天谷氏)可能性がある。もう一つは、アトピー性皮膚炎などの患者の指先や爪にモーションセンサーとしてナノメッシュ電極を貼り付けて「これまでは計測が難しかった、引っかき行動のモニタリングに使う」(同氏)という用途だ。

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