2015年8月の厚生労働省の事務連絡以降、遠隔診療サービスが相次ぎ立ち上がる中で、看護の領域にも“遠隔”への流れが生まれつつある。看護師と自宅にいる高齢者をスマートフォンでつなぎ、会話やカメラ画像で高齢者の体調変化をチェックするような形態だ。

 iPhoneのビデオ電話機能「FaceTime」を使った遠隔看護。高齢の慢性心疾患患者を対象にその検証実験を最近行ったのが、甲南女子大学 看護リハビリテーション学部 看護学科の石橋信江氏(老年看護学 講師)の研究グループである。「第17回 日本医療情報学会 看護学術大会」(2016年7月8~9日、神戸市)でその成果を発表した。

登壇した石橋氏
登壇した石橋氏
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 石橋氏はまず、高齢者の特性として、生活習慣をなかなか変えようとしないことや、体調を言語化して表現するのに困難を伴うことなどを指摘した。遠隔看護はこうした難しさを乗り越える手段になり得るという。ビデオ電話を用いた遠隔看護のメリットとして同氏は、会話や表情を通じて高齢者の様子を把握できたり、高齢者の家族とも会話ができたりする点を挙げる。「高齢者の家の中の様子が分かる点も大きい。調子が悪い時には、部屋がちらかっていたりする」(石橋氏)。

 一方、高齢者にはスマートフォンなどの電子機器に対する苦手意識や拒絶反応があることが多い。そこで、使用する機能や操作を限定したり、簡単な説明書を添付したりする工夫が必要という。