「患者が手帳を忘れてしまう」

 医療機関がPHRサービスを導入する背景は――。まずは、その点から探っていく。

 1型糖尿病を患いインスリン注射を必要とする患者を対象に、2015年12月からWelby マイカルテの利用を促しているのが、新宿に門を構える「ともながクリニック」だ。

自己管理手帳の例
自己管理手帳の例
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 ともながクリニックがWelby マイカルテを導入した理由は明快である。以前は血糖値や血圧値などのデータを患者に紙の手帳に記録してもらっていたが、「来院時に患者が手帳を忘れてしまう」(院長の朝長修氏)という課題があったからだ。

 Welby マイカルテの利用により、リアルタイムに患者情報の共有ができるようになったため、「以前の(手帳を忘れるという)問題は解決された」と朝長氏は語る。現在は、来院患者総勢およそ2000人のうち、50人以上が同サービスを利用しているという。

 同じく、紙の手帳からWelby マイカルテへ一部利用を切り替えたのが、昨今開発が進む千葉県流山市に門を構える「南流山糖尿病栄養内科 さいとうクリニック」。同クリニックでは2016年6月から同サービスの利用を開始したばかり。院長の齊藤辰彦氏は元々、ICTの活用に積極的で、以前からメールで患者とやり取りすることもあったという。

 齊藤氏は、従来の紙に記録する方法の問題点について、「完全な自己申告になってしまうため、嘘や虚偽の可能性がある」(同氏)と指摘する。この問題解決の可能性を模索すべく、Welby マイカルテを導入した。複数存在するPHRサービスの中からWelby マイカルテを選択した決め手は、前述のように複数メーカーの測定機器と連携できることだったという。