医療の質を下げないために…

 岡山氏が医工連携の重要性を訴えるのには理由がある。医療費の高騰は周知の事実だが、「今の医療レベルをいつまで保てるのかに不安を抱いている」(同氏)というのだ。新しい医療機器や医薬品の登場によって、「未来を感じる一方、高齢者の医療に制限をかける可能性も出てくるかもしれない」と同氏は懸念する。

 現在、およそ8000億円の貿易赤字である医療機器分野。循環器系で使用されているステントなどのデバイスも海外メーカーの占める割合が大きいなど多くの分野で国内メーカーのシェアが低いのが現状だ。とはいえ、世界に目を向ければ、医療機器の市場は大きく、特にアジアは倍々の速度で大きくなっているという。「デバイスラグどころか、時期を遅らせても新しい治療が受けられないということがないようにしたい」と岡山氏は訴える。そこで、臨床医の立場から国産の医療機器の開発に力を入れているのだ。「自動車産業のように日本でいいものを作って海外に輸出する姿を描いている」(同氏)。

 医工連携の鍵となるのは、まずはニーズを追いかけることだと岡山氏は語る。「既存の機器の弱点を一番よく知っているのは、機器を使用する現場の先生に他ならない。医療機器の開発においては医学側と提携しないと難しい」(岡山氏)。

 一方、医療機関で機器は製造できない。つまるところ、一緒に開発を進められるパートナー探しが最も重要になるという。これは、「自分が病気になったら良い医師を探しにいくのと同じように、目的に合った医師や企業を探す必要があるということ」と岡山氏は述べた。

 もっとも、医師の最終的な目的は患者に良い診療や治療を提供すること。「それを助けるツールを一緒に開発できたら」と岡山氏は呼びかけた。