症例数が少ない治療法にも対応

 このトレーニングシミュレーターで着目したのは、通常のトレーニングに加えて「TAVI(経カテーテル的大動脈弁植え込み術)」のトレーニングである。TAVIは、切らずに大動脈弁狭窄症(心臓から血液を送り出す弁の開きが狭く、血液を十分に送り出せない疾患)などの心臓弁膜症を治療する手技。低侵襲かつ入院期間の短縮を図れることから近年注目されている治療法だ。しかし、「日本では年間3000例ほどしか行われておらず、一人当たりの症例数が少ないため手技の熟達に時間がかかり、それがリスクになる」(岡山氏)。そこで、TAVI用のデバイスを使うトレーニングにも対応させた。

 シミュレーターのほかに、血管内視鏡の開発も手掛けた。これは、既存のモダリティでは前方方向が見えないため血管を損傷する恐れがあったことや、白黒の映像しか得られなかったことを受けて開発に着手した。開発した血管内視鏡は前方方向の見えるフルカラーのモダリティで、現在すでに臨床現場で使用されているという。