さらなるデータ連携とFileMaker活用スキルの向上

 八事日赤では現在、HISの更新を順次進めている。2016年5月には部門システムをすべて仮想化環境に移行し、FileMaker Serverも今年11月には仮想化システム上で稼働させる。さらに、2017年5月には電子カルテシステムを更新する計画だ。その際には、現在の利用者情報と患者基本情報の連携に加え、データ連携を強化していくという。例えば、FileMaker管理者が操作可能なテーブルにおいてDWHからFileMaker Serverに取り込む検査項目やテンプレート名などの検索項目を選択する、定期的にDWHで検索項目を抽出・CSVファイルに出力し、全部門で共有できるFileMakerのデータベーステーブルに取り込む、あるいは各部門のFileMaker責任者がリレーションやスクリプトでデータテーブルからデータを取得する、などといったことを可能する計画だ。

 HISとの連携を強化しながら、FileMaker活用の拡大を目指す理由を大塚氏は次のように述べる。「それぞれの診療現場で管理したい業務は多種多様です。自らFileMakerで開発するメリットは、自分たちの現場に必要な情報管理を自らの手で開発・改修しながら業務支援に活用できることです。電子カルテシステムやDWHは、各診療科でデータを効果的に2次利用するには柔軟性に欠けます」とし、現場ニーズに即したアプリケーション開発や自分たちでハンドリングできるデータ庫を持つことができるFileMakerシステムのメリットを強調する。

 ただし、現場でFileMakerシステムを有効活用するためには、職員のFileMakerスキルを高める必要がある。八事日赤ではそのため、ファイルメーカー社の協力を得て希望者にトレーニングを実施している。2014年度からは全11回の研修会を、初級・中級・上級の3コースで全11回にわたり開催してきた。「これまでFileMakerに関心が薄かった職員も、メリットを認識して自分でも修得してみようという人が現われています」(大塚氏)。トレーニング参加者も増えつつある。

 「腎臓内科でFileMakerアプリケーションの開発・改修ができるのは、今のところ私1人。診療科内の全員にFileMakerを活用してもらうためには、部分的であってもより多くの職員が何らかの形で開発に携われる環境にしていきたいと考えています」(大塚氏)とし、臨床現場で役立つシステム開発・運用を目指していくと話す。

■病院概要
名称:名古屋第二赤十字病院
所在地:名古屋市昭和区妙見町2-9
開設:1914年12月(1950年に現名称に改称)
診療科:全26科
病床数:812床(一般810床・第一種感染病床2床)
職員数:1922人(医師335人、看護師976人、事務職員258人)
Webサイト:http://www.nagoya2.jrc.or.jp/
主要導入システム:ファイルメーカー「FileMaker Pro、FileMaker Server」

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