診療科・事務部門のすべてで日常的に活用

 前田氏が所属する循環器センター・循環器内科では、循環器DICOM動画像システムを中心とする循環器部門システムのサブシステムという位置付けでFileMakerシステムを運用し、様々な業務支援アプリケーションを活用している。

 その1つに心臓カテーテル手術室の運用状況を管理する「心カテステータス表示」がある。カテーテル台帳として利用している循環器部門システムから心臓カテーテルのデータ(電子カルテシステムのオーダー情報を連携したデータ)を取得して、施術予定をカレンダー表示する。該当日の実施状況を部門職員全員で共有するためのものだ。患者IDおよび患者名、カテーテル検査や冠動脈インターベンションなど手技内容と、当該患者の腎機能を表すeGFR(推算糸球体濾過量)なども表示する。また、このアプリでは実施ドクターのレポートが登録されているかどうかのステータスも管理している。登録状況を1週間に1回チェックし、レポートが未登録の場合は、担当ドクターに督促メールを送信することが可能だ。

循環器内科の心カテステータス表示
循環器内科の心カテステータス表示
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 循環器内科ではこのほか、カンファレンス記録や症例台帳、入院患者に対する主治医割り振り順番管理など、様々な業務支援に活用している。

 腎臓内科では、入院患者、コンサルテーションのあった患者、腎生検を施行した患者に関わる各種情報をFileMakerで管理している。特に腎生検については1980年以降の全症例についてデータベース化しており、患者の基本情報はもとより、臨床経過や生検時の各種検査結果、病理所見、診断名などをマネージメントしている。腎疾患は経過が数十年にわたる場合もあり、電子カルテの情報のみならず紙カルテの内容も診療で必要になることがあるが、FileMakerでデータベース化してあることから、ほぼ瞬時に必要な情報を取り出すことを可能にしている。

腎臓内科の腎生検臨床経過および検査成績
腎臓内科の腎生検臨床経過および検査成績
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 「次期システム更新では、できる限りHIS側とデータ連携した運用を目指しており、血液や尿検査などの結果を定期的にDWHからFileMaker Serverに取得できるようにし、所見などのHISへのフィードバックも自動化していきたい」(大塚氏)という。

 一方、事務部門では、医療統計室や画像情報管理室、相談センターなどで、FileMakerを利用して業務管理を行っている。例えば医療統計室では、医師・看護師・コメディカルからの依頼を受けてDWHからデータを抽出して提供しているが、個人情報が含まれるデータの場合には依頼者の署名が必要になる。そのための業務依頼書の作成にFileMakerシステムを利用している。「当部署ではDWHにODBC接続できるようにしているため、依頼者の氏名や所属、職名などは、職員情報マスターからFileMakerに取り込んで依頼書を作成しています」(医療統計室主事 栗木彩帆氏)。

医療統計室主事の栗木彩帆氏
医療統計室主事の栗木彩帆氏

 同室では、定期的なデータ抽出はExcelのVBAを使って提供している。栗木氏は、「レイアウトを便利に設定できるFileMakerでも同様のことができるのではないかと考えており、作成後のメンテナンスや作業に必要なスキルを含め、今後検討していきたいと思っています」と話す。